人々を幸せにし、寿命まで伸ばす
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世阿弥(ぜあみ)の心に響く言葉より…
世阿弥が『風姿花伝』の最初の版を出したのは、1400年のこと。
「秘伝」として書かれた本書は、明治時代に再発見され、以後長きにわたって幅広い読者に読まれ続けています。
一般に「能楽の本」として知られる本書ですが、広く読まれるには理由があるのです。
第一に本書は、「勉強論」であり、「教育論」であるということ。
「初心忘れるべからず」という本書から生まれた格言の通り、一貫して世阿弥は学び続けること、成長のための努力を続けることの大切さを説きました。
彼は、どんなに才能がないように見える人間でも、工夫次第で「花のある役者」として大成できることを力説します。
そして若者も、歳とった人物も、褒めることによってその力は引き出せると、座長 の立場から世阿弥は説いています。
つまり本書は、日本最古に等しい自己啓発書であり、またコーチング論を展開した 書、と言うこともできるわけです。
また本書は、「いかにお客に喜ばれる能を提供するか?」という面から追求された、本格的な「ビジネス論」でもあります。
誰もが持っている、人より優れた要素……それが本書で再三語られる、演技におけ る「花」という言葉になりますが、誰もが持つ「花」をいかに効果的に、最高のタイ ミングで、相手に披露するか?
その究極が「秘すれば花」という名言になるのですが、その真意は手の内を明かさずにして、知らず知らずのうちに相手を惹き付けてしまう心理戦術。
交渉、プレゼン、 マーケティングなど、ビジネスにおける戦略として重要なことが、すでに本書には含 まれているのです。
13歳の頃に一人の旅芸人をカリスマにした成功戦略は、現代のビジネスパーソン にもそのまま使えるテクニックになるでしょう。
そして最後に、本書は怒濤の人生を送った一人の偉人が、その生涯で学んだ教訓を 後世に残そうと、改編に改編を重ねて残した「人生論」であることを忘れてはいけま せん。
若くして成功した世阿弥でしたが、父であった能の確立者・観阿弥や、将軍義満の死後、名声を羨(うらや)んだ人物によって不遇を味わうことになります。
世から忘れられるのみならず、佐渡への流罪まで経験することになってしまったのです。
そんな境遇にあっても、綴り続けたのが『風姿花伝』でした。
なぜ、彼はそこまで諦めなかったのか?
それは世阿弥が追い求めた、能というものの本質にあります。
先に答えを言ってしまいましょう。
それは「人々を幸福にすることだ」と、彼はストレートに自身の使命を説いています。
人々を幸福にする目的のために、彼は「能」という芸能を大成し、優れた演技者を育て続け、また多くの素晴らしい脚本を書き続けたのです。
『風姿花伝(いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ)』致知出版社
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本書の中に世阿弥のこんな言葉があった。
『秘儀にはこのようにあります。
「そもそも芸能というものは、人々の心を和らげ、身分の上下を越えて皆が一体となれる感動を生み出せるものである。だからこそ芸能は、人々の幸福を増長し、その寿命までを延ばすことができる。まさにこの道の追求は、いつまでも幸せで、いつまでも健康な人生を人々に提供するものなのだ」
しかし、それを実践するにあたっては、心得ておくべきこともあります。
上流階級の人々で、高い鑑識眼を持っている人たちの目で見れば「長(たけ)」や「位」を究めた役者はその要求にぴったりと合う演技をしますから、まったく問題はないでしょう。
一方で鑑識眼のない観客もいます。
たとえば都から遠く離れた地方や、田舎の身分の低い人々の目では、この「長」や「位」の高い演技は、なかなか理解することができないでしょう。
これにはどう対処すべきでしょうか?
答えは簡単で、どんな人をお客さんとするのであっても、能の芸というのは、目の前の人に愛される能を提供することで、人々に幸福を届けるような一座が建立(こんりゅう)できるまでになるのです。
ですからあまりに高尚で、多くの観衆に理解できない演技ばかりでは、すべての人を喜ばせることはできません。
能の初心を忘れず、ときに応じ、場所に応じ、芸のよし悪しがわからない人にも「素晴らしい」と思えるような能をすることこそ、人を幸福にする一流の芸人への道なのです。』
「芸能は人々を幸せにし、寿命まで延ばすことができる」という。
まさに、これは能や芸能だけでなく、すべての人にも言えることだ。
自分の生きざまを通して、人々を幸せにし、健康な人生を提供し、寿命まで延ばすことができる。
そのためには、能でいうなら演者が、たえまない自己研鑽によって、自分を高め、魂を磨くこと。
そしてそのことによって、素晴らしいパフォーマンスを観客に見せることができる。
そうすることによって、観客に新鮮な感動を与え、寿命まで延ばすことできる。
また、誰に対しても分かる芸でなければならないという。
それは、お釈迦様の使う「対機説法(たいきせっぽう)」でもある。
さまざまな価値観や、能力や環境の違う人々に対して、臨機応変にわかりやすい説法を心がけたという。
たとえ話を多用し、誰にもわかる言葉を使った。
自分の生きざまを通して、人々を幸せにし、寿命まで延ばすことができたら最高だ。
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自分の生きざまを通して、人々を幸せにし、寿命まで延ばすことができたら最高ですね😄